この作品のレビュー
平均 4.1 (211件のレビュー)
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即決の限界もあれば、優柔不断の限界もある。
小学生の100m走では、同級生たちがタイムを競うなか、人間が超えられないタイムの「限界」について考えていた高橋。「限界」の領域について、「感性」「知性」といった切り口で語ってきた著者が、本書では「理性…」で切り口に語ります。
年を追うごとに徐々に記録が更新されているとはいえ、100m走のような物理的な限界があるものは、何らか限界を設定していくことはできそうです。では、人間の「理性」という捉え難い能力の限界は、どう分析され得るのでしょうか。本書では、研究者から会社員、大学生まで各分野の語り手が登場。シンポジウム形式で「理性の限界」についての議論が進めていきます。
協調か裏切を迫られる「囚人のジレンマ」で人間の選択行動を説き、「アロウの不可能性定理」で投票行動の難しさを語ったかと思えば、ぬきうちテストのパラドックスやエイプリルフールといった身近な話題に言及します。専門分野を理解するには、「雑談」から知るのが最もわかりやすいという高橋ならではの展開は、誰もが知的好奇心をくすぐられる要素に充ちています。
頭でわかっていてもできないこと。「なぜだ!」と頭を抱えることの秘密がこちらに。続きを読む投稿日:2016.11.15
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面白い思考実験の数々
人は理性的、合理的判断を基に科学というモノサシを使って進歩や進化を遂げてきましたが、それでも生活の中にはまだまだ最善を尽くしたにも関わらず予期せぬ結果を生んでしまう事があります。人の理性的、合理的判断…に限界はあるのか?果たして「選択の限界」や「科学の限界」や「知識の限界」といったものは存在するのか?存在するならばそれはどういった概念なのか?人はそれを知ることが出来るのか?またどう対処すべきなのか?という根源的かつ哲学的問いかけにまで広がる疑問を、様々な専門家が討論をしながら現代の科学、知識の到達点を理解させてくれます。
まず最初のテーマは「選択の限界」について、です。投票、という民主主義の根幹に関わる制度に、実はいかに投票方式(単純に1位を決めるにしても、全体の過半数を超えない場合はどうするのか?や点数を付けた投票方式【1位5点、2位4点、3位3点、4位2点、5位1点等の点数方式】を取るのか、など)が既に公平性を担保出来ていないことに無頓着過ぎるという指摘は、非常に面白かったです。そしてさらに推し進めて考えたのが「アロウの不可能性定理」です。この定理はかなり衝撃的でした。結論だけを書くといかなる投票方式も公平ではない、ということです。そしてそれを知った上での「しっぺ返し」や「囚人のジレンマ」や「チキンゲームは非合理的戦略が最も合理的」といった思考実験がまた面白いのです。
続いてのテーマは「科学の限界」について、です。アニミズムから天動説、そして地動説を唱えることの危険性、つまり宗教的解釈との整合性を科学が破ることについての言及、感情や信仰心を超えた科学の計算によってもたらされたハレー彗星への予言など、事例に基づいた話しを繋げることで非常に分かり易くなっています。そしていよいよ本題の「ラプラスの悪魔」、「光速度不変の原理を導く相対性理論」そしてミクロな世界の不確定性「ハイゼンベルクの不確定性原理」について話しがおよび、量子論を含む観念的な世界へ話しが進みます。これは以前に読んだ「なぜ、脳は神を創ったのか?」苫米地 英人著の私が良く分からなかった部分の話しでもあります。2重スリット実験の結果はかなり考えさせられますし、思考実験「シュレーディンガーの猫」もどうも納得し難い部分もあります。が、最後に来て恐ろしいまでに突き詰めた考え方ファイヤアーベントなる人物の「方法論的虚無主義者」の主張は凄いです。
そして最後のテーマが「知識の限界」について、です。ここでは論理的、言語的ゲームのような世界のパラドックスを例に挙げ、そしてそのゲームを数学の世界に呼応していくと、ゲーデルの不完全性定理を理解し易くなっています。もちろんそれでも私のような者には難しいですけれど。つまりシステム内における完全性を否定出来る、ということなのだと(非常にざっくりした感覚ですが)思いますが、これこそ、神(限定的な意味での、という注釈はつきますが)の存在を否定できうるという論理に繋がっています。そして、最後に「合理的愚か者」の話しで締めくくるのは上手いと思いました。
かなり面白い考え方、知らなかった数学や哲学での意味や定義、そしてそれらを分かり易く理解するためのディスカッション形式での記述、いくつもの工夫がなされていて本当に楽しい読書でした。
思考実験や知らないことを知る楽しみを理解出来る人にオススメ致します。続きを読む投稿日:2014.01.17
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